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« 構造改革概論 5.さいごに | Main | 構造設計事件−業界の裏側− »

December 01, 2005

構造設計事件の理解への準備

いま、マスコミを、マンションの構造設計を偽って、確認申請を通過させ、耐震強度の弱いマンション等を乱立した事件が、にぎわせている。

なんでも、震度5以上の地震が来ると、倒壊の恐れがあるそうだ。
それ故、住民の避難は急務なのだが、数が多すぎて、動きがとれないらしい。

しかし、建築の構造に関する報道は、全くと言っていいほどなく、鉄筋コンクリート造に関する知識も、ほとんど報道されていない。

なので、この事件を理解するための、必要最小限の知識について書くことにする。

私は、一級建築士ではないが、受験資格は持っている。
私立の大学院を修了した工学修士である。
構造は専門ではないが、最低限の知識はある。
ただ、ん十年前のことなので、ミスがあれば、ツッコミ歓迎である。

鉄筋コンクリート造(以下、RC造)は、コンクリートの中に、鉄筋を埋め込んだ構造だ。
互いの欠点を補い、役割を分担することにより、安価で高強度の構造を作れる仕組みである。

まず、話題の鉄筋である。
針金を想像して欲しい。
両端を持ち、両手を狭めれば、どうなるか?
グニャと、曲がってしまうことだろう。
しかし、少々引っ張っても、切れることはない。
で、ねじると、ある程度の太さなら、ねじれてしまうだろう。

コンクリートは、黒板に書くチョークを想像して欲しい。
少し力を入れると、ポキッと折れてしまうことは、皆さんご存じだろう。
しかし、真っ直ぐに立てて、上から押しても、容易にはつぶれない。

これら、それぞれの欠点を補い合い、あらゆる力に対して、一定の強度を持ちうるようにしたのが、RC造なのである。

あのような構造(不静定ラーメンというが、省略する)にかかる力は、圧縮、引っ張り、剪断、曲げモーメントである。

コンクリートは、主に、圧縮を担当する。
これは、実に、高強度である。
強度は、セメント、骨材等の配合によって変わる。

しかし、剪断には弱い。また引っ張りにも弱い。
なので、これらは、強度をゼロとして、計算する。
これらの応力に対しては、鉄筋の分担なのだ。

曲げモーメントは、主に鉄筋が、分担する。

各部位の荷重を計算し、それに耐えうる断面形状、配筋を行い、構造設計は終了する。

で、今回の手抜き工事の事になる。

圧縮に関しては、全く問題がない。
コンクリートは、現場うちなので、施工によってムラが生じるため、安全率が見込んである。
1/3である。
つまり、設計強度100kg/cm2の場合、理想的な施工をすれば、300kg/cm2に耐えうると言うことになる。
手抜き工事だとしても、150kg/cm2はあるだろう。
なので、手を抜いても、破壊することは、まずあり得ない。

問題は、鉄筋が分担する、引っ張り、剪断などの強度だろう。
これは、配筋に依存する。
これが、1/3しかないのだから、それなりの強度しかない。
また、鉄筋自体は、工場で生産されるため、安定していることが期待されていて、安全率が低くなっている。
つまり、「いっぱいいっぱいまで、見込まれている」のだ。
なので、鉄筋に関しては、余裕は期待できない。

しかし、実際には、ゼロと見込まれているコンクリートの剪断強度、引っ張り強度も、ゼロではないのだ。
先のチョークの例ではないが、チョークの両端を引っ張ってみて欲しい。
あれを、引きちぎれる人が、何人いることだろう?
非力な人では、まず無理である。

なので、ひびなどが入っていない箇所は、それなりの強度が期待できる。

また、構造設計は、長期荷重と、短期荷重に分けて、計算する。
長期荷重とは通常時、短期荷重は地震時の応力だ。

長期荷重の場合、等分布荷重として計算する。
単位面積あたりの荷重が決まっていて、それを元に算出する。

なので、実際の荷重とは、異なる荷重で計算されている。
とんでもない重さの家具を、部屋いっぱいに入れている場所は、荷重オーバーであるし、何もない部屋では、余裕ばりばりである。
ただ、これにも、一定の安全率を見込み、重めの数値がでるようにしてある。

なので、よほどのことがない限り、長期荷重で、倒壊することは無い。

短期荷重については、横から揺れが加わることが多いため、鉄筋の分担が大きく、鉄筋の量によって、強度が変わる。
なので、これは、言われているとおりだろう。

昔の耐震基準は、関東大震災を基準に作られていた。
同程度の地震があっても、倒壊しない事が目標である。

阪神・淡路の震災があってから、強度の見直しがあり、新基準が設定された。
今回の場合は、これに違反しているわけだ。

そもそも、関東大震災を基準にしたのは、このクラスの地震は、50〜100年に一度あるかないかの頻度だからだ。
それに対して、建物は、平均30年程度の寿命しかない。
建築物の強度を算定する場合、運が良ければ、一度も、同クラスの地震がないかも知れないという前提に基づき、上限を、この震災にしてあったのだ。

遙かに高強度の構造も作れるのだが、とんでもなく高価になってしまい、誰もビルを造れなくなるので、こうなっている。

しかし、阪神・淡路の例によるまでもなく、今後来る地震が、同程度である保証など無く、耐震基準通りに建てたとしても、100%の保証は、誰にも出来はしない。

事は、人命に関することだ。
避難できる場合は、もちろん、避難した方が良い。
しかし、放っておいても、自重で自然に倒壊するレベルの建物は、きわめて少ないはずだ。
あくまでも、「保証できない」と言うことなのだ。

もちろん、手抜きをした連中の肩を持つつもりは、全くない。
ただ、引っ越したくても引っ越せず、いつ倒壊するか冷や冷やしている人、うちのマンションは大丈夫なのか?と、心配になってしまい、夜も眠れない人のために、書いているのだ。

だれも、保証なんか出来ません。
また、耐震基準に合致しているからと言って、100%の保証は出来ません。
どの建物についても、可能性でしかないのです。

急いで建てた、建て売りの一戸建てに住んでいる人と、今回のマンションに住んでいる人の地震に対する危険度の違いは、誰にも分からないことなのです。

まず、深呼吸して、落ち着いてください。
地震時以外では、倒壊の恐れは、きわめて低いはずです。
落ち着いてから、皆で知恵を出し合って、善後策を検討してください。

なお、事件に関する直接のコメントは、項を改めて書きます。

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